ハニーファームの1年
ヘザーヒルズ・ファームは1955年創業以来、
当時とすこしも変わらず不屈のスコットランド魂を持って養蜂の仕事を続けています。
1997年のことですが、その年は冷夏でヘザーの花がほとんど咲かず、ヘザー・ハニーの収穫も極わずかでした。
自然が相手の仕事は誰にもコントロールすることは出来ませんが、私たちにとっては大きなショックでした。
その様な年でも私達はミツバチの越冬のために、まずミツバチ用のヘザー・ハニーを確保し、残りを販売しました。
ミツバチの健康状態は次の年のはちみつの品質に大きな差が生まれるからです。
現在、私達がスコティッシュ・ハニー(スコットランド産はちみつ)以外のはちみつも扱う様になった理由は
スコティッシュ・ハニーが収穫出来ない年もあるからです。
通常、養蜂家達は花のない季節にお砂糖水を餌としてミツバチに与えます。
でも私達はヘザーヒルズ ブランドのはちみつの品質を維持するためにヘザー・ハニーを与えます。
これは創業以来守り抜いてきた私達の精神・スコットランド魂です。
私達の一年間の仕事内容を皆様にも知って頂きたいのです。
11月から3月まで
11月に入るとミツバチ達は越冬の準備をします。
冬眠はしませんが、群がって冬を過します。群がっている中の温度はミツバチ達の体温で温いのです。
彼等は夏の間に巣箱に貯えたヘザーハニーを食べて温かさを保ちます。
冬の間、私達はミツバチ達のために、巣箱の中のヘザーハニーがなくならない様に気を配ります。
3月に入り春が近くなって来ると、ミツバチ達は少し暖かな日に巣箱の掃除をしたり、巣箱を出てちょっと飛んでみたりします。
昼間が長くなり暖 かな時間が増えると、それぞれの巣箱に1匹ずついる女王蜂は彼女の世話をするミツバチ達に刺激され沢山の卵を産む様になります。
そして働き蜂たちは春一 番初めに咲く柳の花蜜と花粉を集めてはちみつを作り、新しく生まれたミツバチの幼虫達に与えます。
特に花粉は新しく生まれた幼虫達の大切なタンパク源になるのです。
そして、ミツバチ社会は週を重ねる毎に活気に満ちてきます。
4月から5月
長い冬が終わるとミツバチ達は巣箱にはちみつを貯蔵して行くため、甘い蜜を持つ花が必要になります。
私達が住むパースシャーでは冬の間にミツバチの為、菜の花の種を蒔きます、
そして春、柳の花が終わる頃、広い野原は菜の花の黄色一色で彩られます。
菜の花の花蜜と花粉は、ミツバチ達がその年に作り始めるはちみつの最初の重要な蜜源になります。
私達は1,300個以上の巣箱をシェルターから出して、菜の花の咲く野原に移します。
それから次の仕事にかかります。
太陽が十分に暖かさを与えてくれる日、私達は巣箱から全部のミツバチを出し、
それぞれの巣箱から女王蜂を探さなければなりません。
これは大変な作業ですが、大事な作業でもあるのです。
なぜなら、1つの巣箱に5万匹以上のミツバチがいますが、その中から女王蜂を見つけ出し素早くドライペイントで彼女の背に印をつけます。
そうすると後で巣箱にいる女王蜂を容易に見つけることが出来、新しく生まれて来る女王蜂と区別出来るるからです。
私達は1300以上ある巣箱全部から女王蜂を探し出し印を付けなければなりませんから、大変な作業です。
私達、養蜂家にとって女王蜂の健康状態と年齢を知って置くことは、ミツバチ群の自然な秩序を保つためには大切な事です。
ミツバチ群のコントロールは養蜂家にとっては最大の仕事の一つです。
6月
沢山の幼虫がミツバチになり巣箱に活気が出て来ると、ミツバチ群にとっては死滅をも意味することがあります。
なぜなら、ミツバチ社会では1つのミツバチ群には女王蜂は1匹でなければならないのです。2匹になると1匹は殺されてしまうのです。
私達は自然界に於いてミツバチが巣別れする様に巣箱からミツバチを全部出した時新しい女王蜂を見つけ出し、すぐ巣箱を2つかそれ以上に分けます。
天気の良い日に古い女王蜂は何万というミツバチ群の中から数10匹を連れて巣箱を飛び出します。
その数10匹のミツバチ達はお腹いっぱいにはちみつを詰め込んで行きます。
女王蜂と数10匹は一塊になって、暫らくは傍らの樹にぶる下がり、
その後大きな樹の窪みや生い茂った樹に新しい巣を作ります。(養蜂の場合は新しい巣箱に入れます)
巣別れ時期に起こる出来事(新しく生まれた女王蜂が殺されないように)を最小限に留める為、
私達は巣箱1個・1個を入念に調べ巣別れの適切な時を見極めます。
もし巣箱の中に新しい女王蜂を見つけたら、とりあえずミツバチ群を2つに分け、素早く巣別れさせます。
この仕事は大変な作業ですが、新しいミツバチ群が増えるというささやかなプレゼントとなります。
真ん中の少し大きい茶色の蜂が新しく生まれた女王蜂です。
6月はヘザーヒルズ・ファームにとって本格的にはちみつの収穫が始まる月となります。
7月
極上品として知られているヘザーヒルズ・ファームのブロッサム・ハニー(ヘザー・ハニーはさらに極上です)が採れると
はちみつが詰まった蜜枠を巣箱から取り外し、はちみつを採取するために作業場に運び込みます。
そうすると巣箱は軽くなり持ち運び易くなるので、次の蜜源であるヘザーの花が咲き乱れる荒野に巣箱を移動します。
巣箱の入り口を閉じ、ミツバチ達が巣の中にいる間に移動しなければなりませんので、移動は早朝か太陽が沈んだ夕刻に行います。
7月に入ってしばらくの間はこの作業が続きます。
私達はこの移動時期がミツバチ達にとってヘザーが咲き乱れる丘陵や荒野で長い間花蜜を集める前の夏休みと勝手に思っています。
7月半ば過ぎになるとベルヘザーが咲き始めるので、ベルヘザーのはちみつの収穫が始まります。
8月
8月初日、リングヘザーの蕾が開き始め、
9月半ば過ぎまで(時には10月初めまで)パースシャーの丘陵や荒野そして川のほとりなど至る所はリングヘザーの花でうめつくされ、鮮やかな桃紫色で彩られます。
その景色は圧巻としか言い様がありません。
ミツバチ達が1年で一番たくさんはちみつを作る季節です。
私達はミツバチ達が思うようにはちみつを収穫出来るように、巣箱の段を変えたり、巣箱の向きを変えたり、
毎日世話をし、ミツバチ達やはちみつの出来具合を細かく記録します。
巣箱はグループごとに置き、各グループは何マイルも離れていますから、
1日に全部の巣箱を調べることは不可能ですので、毎日順番に巣箱を回ってチェックし、記録してゆきます。
もちろん、女王蜂に健康状態や巣の中の卵や幼虫の状態、そしてはちみつの出来具合を観察し、記録します。
8月に横殴りの強い雨やみぞれが降らないように、晴天が続くように祈りながら作業をします。
9月から10月
ヘザーの花が精いっぱい咲き誇りその年の一生を終えると、はちみつの収穫もほぼ終わります。
私達はミツバチ達の冬の間の餌として、彼らの為にヘザー・ハニーを巣箱いっぱいにして置きます。
さらに、ミツバチ達の消化を助けるためのシロップも入れて置きます。彼等はそのシロップをはちみつと同じように巣に貯蔵して、必要な時に出して使えるように準備をするのです。
近年ミツバチを破滅させる外来のダニがイングランド経由でスコットランドにまで及んで来ました。
1匹のダニがミツバチにつくと病気になり、瞬く間にほかのミツバチ達にもうつり巣箱は全滅してしまいます。これは世界中の養蜂家達が直面している最大の問題です。
それ故、私達はこの忌まわしいダニがミツバチ達の中に入り込まないよう、細心の注意を払います。
この作業はヘザー・ハニーを収穫し終わった後、確実に行わなければならない、1年の最後の最も重要な仕事です。
私達が作るヘザー・ハニーが持つ素晴らしい成分の働きが、この忌まわしいダニを寄せ付けないのかも知れません。
私達は越冬のため巣箱全部をシェルターに移し、氷や冬の嵐からミツバチ達を守るために、
シェルターの中の特に低い場所を選んで巣箱を保管し、世話をします。
そして次の年、再び驚くほど品質の良い、美味しいヘザーヒルズ ブランドのはちみつを収穫するために、
不屈のスコットランド魂を持って努力を惜しまず、春までミツバチ達の世話を続けます。